市場規模 営業生産性 2026.06.11 VRI INSIGHTS / GUIDE

日本の「営業領域」は767万人・人件費27〜37兆円 — 一次統計で測る、生産性向上という的の大きさ

「営業は重要だ」と誰もが言う。では、その規模はいくつか——。国勢調査と賃金構造基本統計調査だけで、日本の『営業領域』の人数と人件費を測り直す。出てきたのは、767万人・年27〜37兆円という、生産性向上の的の大きさだった。

VVRI セールス・インテリジェンス・デスク/編集部 | 読了 16分 | 市場規模 × 営業生産性
767万人 「ものを売る」現場に立つ人 / 就業者の1割超(国勢調査 2020)

「営業は重要だ」と誰もが言う。だが、その営業という活動が日本経済の中でどれほどの規模を占めるのかを、数字で答えられる人は少ない。シンクタンクの仕事は、勘や印象で語られてきた対象を、一次統計の上に載せ直すことだ。本稿は海外データを一切使わず、総務省「国勢調査」と厚生労働省「賃金構造基本統計調査」という日本の一次統計だけで、「ものを売る人」の人数と人件費を推計する。結論を先に言えば、日本の『営業領域』は767万人——就業者の1割を超える——であり、そこに投じられている人件費は年27〜37兆円規模だった。

「営業の規模」は測れる — 勘で語られてきた領域を一次統計に載せ直す

営業は「重要だ」と誰もが言う。だが、その営業という活動が日本経済の中でどれほどの規模を占めるのか——何人が従事し、いくらの人件費が投じられているのか——を数字で答えられる人は驚くほど少ない。市場規模が語られるのは「営業支援ツール市場」や「研修市場」といった周辺サービスばかりで、営業そのものの規模は、なぜか測られてこなかった。

シンクタンクの仕事は、勘や印象で語られてきた対象を、一次統計の上に載せ直すことだ。本稿の設計はシンプルである。職業別の人数(国勢調査)× 職業・産業別の賃金(賃金構造基本統計調査)= 営業領域に投じられている人件費。海外データは一切使わず、日本の一次統計だけを用いる。すべての数値に発行体と年を併記し、前提と限界も最後に開示する。

「営業」をどこまで含めるか — 売る現場の4つの職業

総務省の職業分類では、「売る」現場は大きく4つに分かれる。他人を訪問して勧誘・交渉・受注・契約締結を行う渉外・外交型の営業職業従事者(中分類34)、店頭で商品を売る商品販売従事者(32)、不動産仲介・保険代理など売買の仲立ちをする販売類似職業従事者(33)、そして受注・見積・販売管理を担う営業・販売事務従事者(28)である。世間で「営業」と呼ばれる職務は、この4つにまたがっている。

そこで本稿は2層で測る。狭義は渉外・外交の営業職業従事者(34)だけ。広義はこの4職業すべてを束ねた「営業領域」全体だ。どこまでを営業と見るかで規模は大きく変わる——その感度そのものが、この領域を理解する手がかりになる。

本稿の定義
狭義 268万人 / 広義 767万人

狭義=営業職業従事者(渉外・外交)のみ。広義=+店頭販売+仲介+営業事務の「営業領域」全体。

出典: 総務省統計局「令和2年国勢調査」抽出詳細集計, 2020

営業領域は767万人 — 就業者の1割を超える

令和2年(2020年)国勢調査を職業別に集計すると、それぞれの人数はこうなる。営業職業従事者2,677,390人、商品販売従事者3,704,260人、販売類似職業従事者416,210人、営業・販売事務従事者872,440人。4つを合わせた営業領域は約767万人になる(総務省統計局「令和2年国勢調査」抽出詳細集計, 2020)。

  • 営業職業従事者(渉外・外交営業)… 2,677,390人
  • 商品販売従事者(店頭販売)… 3,704,260人
  • 販売類似職業従事者(不動産仲介・保険代理など)… 416,210人
  • 営業・販売事務従事者(受注・見積・販売管理)… 872,440人
  • 営業領域 合計 … 約7,670,000人

この767万人は、国勢調査が捉えた2020年の就業者(約6,547万人)の1割を超える。ざっと8人に1人が、何らかの形で「ものを売る」現場に立っている計算だ(総務省統計局「令和2年国勢調査」, 2020)。製造業や医療・福祉と並ぶ、巨大な人の塊がそこにある。

なお、職業別の人数を産業横断で取れる国勢調査は、現時点では2020年が最新である。国勢調査は集計の種類ごとに公表時期がずれ、職業の細かいデータは最後に出る。2020年調査でも営業職業従事者が確定したのは2022年だった。令和7年(2025年)調査の職業集計が公表されるのは2027年以降の見込みで(総務省統計局, 2025)、本稿の人数は今とり得る最新の確定値にあたる。

営業領域の人口規模
767万人

就業者の1割超(およそ8人に1人)。狭義の「営業職」だけでも268万人。

出典: 総務省統計局「令和2年国勢調査」抽出詳細集計, 2020 / 就業者数(不詳補完値)も同調査, 2020

ひとつ断っておくと、営業職などの産業別人数は約1%の抽出に基づく「抽出詳細集計」の推計値で、10人単位に丸められている。小さな産業ほど誤差は大きく、ここで扱うのは精密な実数ではなく桁の大きさだ。それでも、これだけの規模が公的統計で確認できること自体に意味がある。

人件費にして年27〜37兆円 — 「正社員」と「パート」を分けて測る

次に賃金を掛ける。賃金は厚生労働省「令和6年(2024年)賃金構造基本統計調査」を用いる。ただし、767万人全員に同じ年収を掛けるのは乱暴だ。営業領域は、職業によって労働の形がまるで違うからである。

国勢調査で従業上の地位を見ると、その違いは一目瞭然だ。営業職業従事者は正規83.7%・パート3.7%とほぼ正社員の世界。ところが店頭の商品販売従事者はパートが53.5%を占め、仲介の販売類似職業従事者は自営(雇人のない業主)が35.2%と独立自営の色が濃い(総務省統計局「令和2年国勢調査」抽出詳細集計, 2020)。だから「正社員は月給ベース、パートはパート年収、自営は企業の人件費に含めない」と分けて積み上げる必要がある。

用いる賃金パラメータは次のとおり(いずれも厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」, 2024)。

  • 営業職(一般労働者)… 年収 約607.5万円(自動車・機械器具・金融・保険・その他の営業5区分を労働者数で加重平均)
  • 店頭販売(販売店員)… 正社員 約369.4万円 / パート 約110万円(時給1,181円×実働の換算)
  • 営業・販売事務従事者 … 年収 約511.9万円
  • 仲介(販売類似職業従事者)… 年収 約662.3万円

これを2つの幅で出す。全員を正社員(一般労働者)の年収で計算した上限——FTEベース——は約37兆円。正規・パート・自営を分け、自営分を人件費から除いた実態ベース——雇用者ベース——は約27兆円。両者の差の大半は、店頭販売のパートと仲介の自営から生まれる。つまり、この幅そのものが営業領域の労働構造を映している。

営業領域の人件費(年・推計)
¥27〜37兆円

実態に近い雇用者ベース27兆円 〜 全員正社員換算のFTEベース37兆円。狭義の営業職だけで15〜16兆円を内包する。

人数=国勢調査2020・賃金=賃金構造基本統計調査2024による VRI 推計

桁の妥当性も確かめておこう。日本の雇用者報酬の総額は314.2兆円である(内閣府「国民経済計算」2024年度)。営業領域の人件費はその約9%(実態ベース)〜12%(上限ベース)にあたる。営業領域は就業者の1割超を占めるが、人件費シェアがそれよりやや低いのは、低賃金のパート店頭販売を多く抱えるためだ。人数のシェアと人件費のシェアが、労働構造を通じてきちんと符合する——推計は内部的に整合している。

狭義の「営業職」だけで15〜16兆円 — 重心は卸売・金融・製造

渉外・外交の営業職業従事者(268万人)に絞って、もう一段深く見る。ここでは2つの独立した方法で人件費を出した。産業ごとの平均年収を産業別の営業職人数に掛けて積み上げると約15.2兆円、営業職そのものの実勢年収(約607.5万円)を全員に掛けると約16.3兆円。出発点の違う2つの計算がほぼ同じ値に着地する——この三角測量の一致が、推計の頑健さを物語る(人数=国勢調査2020、賃金=賃金構造基本統計調査2024)。

産業別に見ると、営業職の経済的な重心がどこにあるかが浮かび上がる。営業職人件費を産業大分類別に積み上げた内訳は次のとおりだ。

  • 卸売業・小売業 … 営業職 976,060人 / 人件費 約5.3兆円
  • 金融業・保険業 … 439,260人 / 約2.95兆円
  • 製造業 … 367,870人 / 約1.97兆円
  • 建設業 … 202,400人 / 約1.14兆円
  • 不動産業・物品賃貸業 … 168,740人 / 約1.01兆円
  • 情報通信業 … 145,800人 / 約0.92兆円

この上位6産業だけで、営業職人件費の約87%を占める。卸売・小売が最大の塊である一方、1人あたりの重みでは金融・保険、情報通信、不動産が大きい。形のない金融商品やシステム、不動産を売る——すなわち無形のソリューションを売る産業ほど、営業に厚く投資している構図が見える。AIで情報の非対称性が崩れ、製品が機能で差別化しにくくなるほど、この「無形を売る力」への投資は重みを増していく。

これは「桁感」である — 前提と限界を開示する

シンクタンクの推計は、前提を隠さないことで初めて信頼に値する。本稿の数字には、次の限界がある。

  • 年次のズレ … 人数は2020年、賃金は2024年。販売従事者は2015→2020で減少傾向にあり、2020年の人数に2024年の賃金水準を当てた規模である。
  • 産業平均賃金 ≠ 営業職の賃金 … 産業別の平均は全職種を含み、営業職特有の歩合や賞与、職位構成を反映しない。だから狭義では職種ベースの計算も併記した。
  • 抽出詳細集計は約1%抽出の推計 … 小規模な産業ほど誤差が大きい。10人単位に丸められている。
  • 営業・販売事務(28)の正規/パート比率は中分類別表に未収録のため、近い職業群から仮置きした(要・一次確認)。
  • パート年収は、店頭販売以外は一般的なパート水準で仮置きした(影響は軽微)。
  • 定義の性格差 … 渉外・外交の営業職(34)と、店頭販売・仲介・事務は労働の性格が異なる。だからこそ4層に分け、狭義と広義の2つで示した。

これらを踏まえれば、本稿の数字は「正確な決算値」ではなく「意思決定に足る桁感」だ。だが桁感こそ、議論の出発点になる。767万人・27〜37兆円という大きさを共有してはじめて、「では、この領域の精度をどう上げるか」という問いに進める。なお令和7年(2025年)国勢調査の職業集計が公表されれば、本推計は最新値で更新する予定だ。

数字を断定しないことは、弱さではない。前提と限界まで開示したうえで桁を示すことが、勘で語る議論を一段先へ進める。これがシンクタンク型のアウトプットだ。

27〜37兆円の的に、どんな知性を当てるか — バーチャル・シンクタンクの意図

ここまでの数字が指し示すのは一点だ。日本は「ものを売る」現場に、767万人・年27〜37兆円を投じている。これは、生産性向上という観点から見れば、途方もなく大きな“的”である。

ところが、この的に当てる弾——「誰に・何を・なぜ売るか」を決めるための調査・インテリジェンスは、多くの企業で断片的で属人的なままだ。顧客の購買プロセスも、競合の動きも、規制や市場の変化も、誰かの頭の中にある断片として散らばり、組織として体系的に集約・検証・更新されていない。日本の営業生産性がなぜ低いのか——その根因の多くは、営業の“前段”にあるこの知性の欠落にある。

バーチャル・シンクタンクの意図は、この営業領域全体の生産性を底上げすることにある。一次情報をAIが集約・構造化し、各領域の専門家が検証・解釈して「使えるレポート」に変え、営業と経営企画へ届ける。767万人の一人ひとりの判断を、勘から一次情報へ——その機能を、外注先ではなく貴社の中に持つのがバーチャル・シンクタンクだ(社内シンクタンクの作り方も参照)。

27〜37兆円の的は、わずかな精度改善でも莫大なリターンを生む。営業領域の人件費の1%は、それだけで数千億円規模だ。だからこそ、人数を増やすのではなく、一人ひとりの“精度”を上げる仕組み——営業の前段にある知性の設計——に投資する価値がある。市場の大きさを測ることと、自社の勝ち筋を見極めること(市場性の検証)は地続きだ。

営業は「人数」ではなく「精度」で効く。767万人・27〜37兆円という的の精度を一段上げる仕組みこそ、自社専用のシンクタンク機能である。

よくある質問

「営業領域767万人」という数字の根拠は何ですか。

総務省統計局「令和2年国勢調査」抽出詳細集計(2020年)の職業分類で、営業職業従事者(渉外・外交営業)2,677,390人、商品販売従事者(店頭販売)3,704,260人、販売類似職業従事者(不動産仲介・保険代理など)416,210人、営業・販売事務従事者872,440人を合計した約767万人です。これは国勢調査が捉えた2020年の就業者(約6,547万人)の1割を超え、およそ8人に1人にあたります。なお店頭販売・仲介・事務を含めない狭義の「営業職」だけなら268万人です。

人件費が「27〜37兆円」と幅があるのはなぜですか。

営業領域は職業ごとに労働の形が大きく違うためです。全員を正社員(一般労働者)の年収で計算した上限(FTEベース)は約37兆円。一方、国勢調査の従業上の地位で正規・パート・自営を分け、店頭販売のパート(同領域の53.5%)はパート年収で、仲介の自営(同35.2%)は人件費に含めずに積み上げた実態ベース(雇用者ベース)は約27兆円です。差の大半は店頭販売のパートと仲介の自営という、営業領域の労働構造そのものを映しています。

なぜ2020年の国勢調査を使うのですか。もっと新しいデータはないのですか。

職業別の人数を産業横断で取れる国勢調査は、現時点では令和2年(2020年)が最新だからです。国勢調査は集計の種類ごとに公表時期が大きくずれ、職業(中分類)のデータは最後に出ます。2020年調査でも営業職業従事者が公表されたのは2022年でした。令和7年(2025年)調査の職業集計が公表されるのは2027年以降の見込みで(総務省統計局, 2025)、本稿の人数は最新の確定値にあたります。賃金は毎年調査される令和6年(2024年)の値を用いています。

この推計はどのくらい正確ですか。

「正確な決算値」ではなく「意思決定に足る桁感」とお考えください。人数は約1%抽出の推計値であること、産業平均賃金は営業職そのものの賃金とは一致しないこと、人数(2020年)と賃金(2024年)に年次差があることなど、前提と限界を本文で開示しています。一方で、狭義の営業職人件費を産業別積み上げ(15.2兆円)と職種ベース(16.3兆円)という独立した2方法で出してもほぼ一致し、雇用者報酬総額に対する比率も常識的範囲に収まることから、桁としての信頼性は高いと考えています。

自社の営業領域の規模や生産性は、どう測ればよいですか。

公的統計は国全体の桁感を示しますが、自社の営業領域の生産性は、自社の一次情報(商談データ・失注理由・顧客の購買プロセス・競合や規制の動向)を継続的に集約・検証して初めて測れます。誰に・何を・なぜ売るかの精度を、勘から一次情報へ移す調査・インテリジェンス機能をどう持つか——VRIはその設計から伴走します。お気軽にお問い合わせください。

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